森雪之丞 Poetry Readingの世界『感情の配線』

森雪之丞

1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX: https://twitter.com/yukinojo_news read less
アートアート

エピソード

日曜日のキッチン
26-08-2024
日曜日のキッチン
日曜日のキッチン あなたとじゃなくてもよかった マラケシュのジャマエルフナ広場の 親方に叱られた猿使いの少年でもよかった 落日の朱色が似合って 折れそうに指が長くて 生まれたことを憎んでいるような目をしてれば あなたとじゃなくてもよかった 失わないとね 持っていたことに気付かないものってあるの 若さってそうでしょ 若い頃は若さに価値なんてない もうトシだなと感じた瞬間 使い果たしてしまった若さの素晴らしさに 人は茫然と立ち尽くすの 〝後悔〞は人間だけに蔓延する感情 過去の失敗を未来でまた悔やむなんて キッチンの横に立つトネリコの大木には 人間達の奇妙なゲームにしか見えない 人間だけが悲しいのかな 世界が滅びる前の日も 空はきっと果てしなく青くて 風は途惑いもなく流れて 紋白蝶はあどけなく蜜を啜(すす)って やっぱり人間だけが悲しいのかな アルル郊外のね 使われていない錆びた線路の上をね クロスワード・パズルを解く要領で歩き続けたら そのままアッチの世界へ戻れる気がしたの 終点でゴッホの跳ね橋がもし降りていたら 私はこの身体を上手に脱いでいたと思う なぜ此処にいるんだろ? あなたとじゃなくてもよかった でもあなたとだったから 私は今キッチンにいる 日曜の昼下がり カプリ島の女達は素肌の上に メイドのエプロンをつけるんだって そしてポモドーロのソースを味見をしたり ローズマリーの焦げた匂いを嗅いだりするたびに ちょっと欲情するんだって 欲情と懺悔って似てるかもしれない 原罪なんてどうでもいいけど 生きてることを誰かに許してもらいたいから あなたに欲情してあなたに懺悔する 「やっと愛を学んだな」と 天からお節介な声が聞こえても 私は否定しないの この世界には 失わないと持っていたことに気付けないものがある それを知っただけでも あなたと此処にいて良かったと思う 幸せな時は 幸せに価値なんてないから 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
遊園地の幽霊
12-08-2024
遊園地の幽霊
遊園地の幽霊(ゴースト) 水のないプールには 枯葉の波が立つ 心が透けないように 鉛色のコートを買った君 セーターを脱げば 夏の記憶がまだ 水着の形をしているのに 頬のペンキが剥げた回転木馬は なんだか泣いているみたいだ 脈絡のない言葉 抑揚のない時間 執着のない疑問 目的のない視線 やがて君を遠くで眺めたとき 点描写されたサヨナラだったと 気づかせるためのものたち 花火の夜 錆びついた観覧車が サークルの天辺で故障していたら 君を抱いて僕は 星空を飛べたと思う 滓(カス)になった情熱は 散らばるポップコーンも踏み潰せないくせに 閉園まぎわの遊園地 僕は亡霊(ゴースト)とKissをする 僕が愛した君は この世界にはいないことを もう一度だけ 確かめるために 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
よくあること <江國香織×森雪之丞「扉のかたちをした闇」朗読会ライブ音源>
29-07-2024
よくあること <江國香織×森雪之丞「扉のかたちをした闇」朗読会ライブ音源>
よくあること カレーうどんをたべるつもりが 長崎ちゃんぽんを食べています よくあることです 下田へ泳ぎに行ったはずなのに なぜか箱根で風呂に浸(つ)かっているくらい よくあることです ギターが得意なのに バンドでベースを弾かされているように 恋人にしたかった女性が 一生モノの友達になってしまったように よくあることです 優しさを思い出したら おせっかいと区別がつかなくなっていたり 愛だと信じていたものが 憎しみと掏(す)り替わっていたなんて程度に よくあることです 人を虫けら扱いしたかっただけなのに 政治家になってしまうことや 家族を守りたかっただけなのに 戦場で人を殺してしまうことと同じように よくあることです 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
忘れ上手 <江國香織×森雪之丞「扉のかたちをした闇」朗読会ライブ音源>
15-07-2024
忘れ上手 <江國香織×森雪之丞「扉のかたちをした闇」朗読会ライブ音源>
忘れ上手 失礼しました! 酸素を摂取し二酸化炭素を排出している そんな大変な最中に キスして申し訳ない! 忘れてるんだね 僕達は たとえば心臓 毎分60から90も拍動する働き者を 安寧(あんねい)の中に置き去りにしている たとえば幸福 それがどんなに素敵なものなのか 失くしてからでないと思い出せない 忘れてるんですよ僕達は 世界のどこかで今も 神のために人間達が殺しあっていることを 平気で忘れちまうんです いつかの恋もそうだ 愛が憎しみを分泌する時の 焼きゴテを押し付けられたような あの胸の痛みさえも 今はおぼろげにしか思い出せない だめだね 僕達は そして性懲(しょうこり)もなく また誰かを好きになってしまう 忘れていてもかまわないこと 忘れているから何度も始められること 忘れたふりをして実は鮮明に覚えていること そんなのをゴッチャにしながら 僕達は無秩序に明日を探すのだけれど 油断すると本当に忘れてしまうよ 生きていることを なんかびっくりしてるね 君 もしかしたら今のキスで 生きてるって思い出したの? 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
ひとりになるため誰かを愛して <江國香織×森雪之丞「扉のかたちをした闇」朗読会ライブ音源>
01-07-2024
ひとりになるため誰かを愛して <江國香織×森雪之丞「扉のかたちをした闇」朗読会ライブ音源>
ひとりになるため誰かを愛して 人生が果てない旅だと感じるのは 到達点に“はじまり”とルビを振ってみせた 迷惑な詩人のせいだろう あるいは一本の紙テープだった道筋を 糊で貼りつけ輪っかにしてしま った 幼子(おさなご)の仕業かも知れない 祝祭のある広場にたどり着き 私は恋をする 人いきれに酔い 言葉を応酬し 情熱の灰汁(あく)にまみれた指先で 未来への搭乗券を手渡しあう だがその後 私は猛烈に孤独が恋しくなる 群れを抜け出せばいつも砂漠の空 心を映して月は今宵も さめざめと泣いてくれているのだ 私はまたひとりになるために 誰かを愛してしまったのだろうか? “終わりを失くした始まり”ばかりが 土産物(スーベニール)のように旅行鞄を埋めてゆく人生 それにしても機上のレモンティは どうしてこんなに熱いのだろう 冷めるのを待つ数分だけが 至福の休息だと言わんばかりに 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
五月晴れの空のせい <江國香織×森雪之丞「扉のかたちをした闇」朗読会ライブ音源>
17-06-2024
五月晴れの空のせい <江國香織×森雪之丞「扉のかたちをした闇」朗読会ライブ音源>
五月晴れの空のせい 朝 ハムエッグが焦げたのは電話のせい イビキは夢の中で悪霊を追っ払っていたせい 風邪を引いたのは縮んだパジャマのせい きっと詩が書けないのは風邪薬のせい 責任転嫁は了見の狭い心のせい 昼 ワンタン麺が伸びたのはメールのせい パンツのウエストがキツイのはデザインのせい 仕事に遅刻したのは鮮やかすぎる紫陽花(あじさい)のせい バンパーをコスッたのは黒猫が昼寝していたせい 言い訳はいつも素直になれない心のせい 今キスしたのは会話に飽きたせい 次のキスは理由を訊かれたくなかったせい だから見上げちゃうよね南十字せい ・・・などと 肝心な所で茶化してしまうのは弱虫な心のせい 恋を何かのせいにしないでと叱られたくないせい あの日あなたを抱きしめてしまったのは 何かにしがみ付いていないと吸い込まれそうだった 五月晴れの真っ青な空のせい 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:⁠https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/⁠ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ ⁠https://twitter.com/yukinojo_news
六月は死者が囁く
03-06-2024
六月は死者が囁く
六月は死者が囁く 死者は生きる 生き残った者達の心の中で その者達が死者になるまで 瑞々(みずみず)しく 六月の雨の夜 あなたはここにいる 老いても美しかった あの少し傲慢な笑顔で 友は爪を噛む 風に煽(あお)られた雨粒が不意に窓を叩き この時を待っていたかのように 私は友に詫びる 疎遠になってしまった最後の数年を 逢いたいのに逢わなかった複雑な感情を 病室で別れも告げぬまま 天国に逝かせてしまった不甲斐なさを そして 私に激しく嫉妬させるほど あなたの生き様は素晴らしかったと そう言ってあげられなかった小さな自分を 私は死者に詫びる けれど 赦(ゆる)しもせず 責めもせず 嘆くことも 諭(さと)すこともなく ただ死者は囁く 生きていることの尊さを 沈黙という言葉で 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
八月は幻
20-05-2024
八月は幻
八月は幻 キミの斜め後ろにホコロビがある ほつれた紐や針金が数本 空気から食(は)み出している ホコロビを避けながら愛しあった 崩壊の予鈴(よれい)を喘(あえ)ぎ声で殺しあった やがて 冷蔵庫の奥で発火したマッチのように 短く青白くキミは燃えた 八月は幻 そんなこと大人になれば誰でも知ってる 八月は幻 だからボクは詩人になりすませた 奔放なキミが 不意にそんな涙をこぼすまでは ベッドのどこかにシコリがある さっき抱きあった時ごろごろと 脇腹の辺りで邪魔だった小さな塊 シーツに潜って どうやらキミは確かめている 幻と現実を繋いだ結び目が まだ解(ほど)けていないことを 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
逃亡のような追跡
06-05-2024
逃亡のような追跡
逃亡のような追跡 魂がまた逃亡した 残された身体はまず溜息をつき 愛する人に短い手紙を書いてから 沈む夕陽へとハンドルを切る 魂の逃亡は 無理に大人を演じてきた 自分への復讐なのか? 用意されたエピソードを選ぶしかない 未来への警告なのか? それとも夢の荒野を走り続けた 無頼漢(ピカレスク)への憧憬(あこがれ)? 俺はいつしか 見知らぬ風景の中にいる 初めての街には 迷うための道があり 孤独を映すための月が出る 24や60で割り切れない時間が流れ 言葉の通じない北風が吹く そこにあるのは ざらざらとした違和感 ヤスリのような疎外感 自慢だった人生の垢は擦(こす)り落され 俺はヒトという生き物に戻る ヒトは失っていた情熱を猛烈な速さで思い出し あっと言う間に魂を捕獲する そして不安の中に潜む自由の匂いを嗅ぎ当て 新しい俺がまだこの世界のどこかにいることを教える 生きるということは 生きてゆく自分が 生きてきた自分に 闘いを挑むことだ 魂は逃亡し 身体がそれを追跡する その密かな祭りのような数日を 人は 旅と呼ぶ 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
目を醒ませ ここからが夢だ
22-04-2024
目を醒ませ ここからが夢だ
目を醒ませ ここからが夢だ 目を醒ませ ここからが夢だ 現実が正しいなら おまえは 下等動物 液晶の青い光に群がる インターネットの夜光虫 キーボードを叩いて世界中にばら撒(ま)いた 「FUCK!」の文字は 無邪気な精神科医に 「たすけて」と翻訳された 10000人を見下して 1人前の快感を手に入れたのか? 10000人に無視されて 1人称の孤独を確かめたのか? 鍵の掛かったドアを 今誰かがノックする その音に… 目を醒ませ ここからが夢だ 現実にこだわるなら NAOMIは 合成樹脂 他人の人生を盗み聴きする 赤いプラスチックの灰皿 カフェに芽生えた 幾千もの恋やゴシップは覚えているが 彼女自身には物語がない 女の指に火を押し付けられるが 憎まれているのではなく 男の息が肌に触れたとしても 愛されているのではない どんなに泣き喚わめいていても 静かな風景の一部でしかない その苛立(いらだ)ちに… 目を醒ませ ここからが夢だ オレは 腐ったサボテン 月日とともに曲がっちまって 自慢だったトゲが今は自分を制している WATARUは 悪臭漂うアルミニウムの屑箱 ボランティア精神にのっとり 捨てられたモノたちに身体を奪われていく MIDORIは 官能小説68P目の紙切れ 67Pで絡めあった恋人の指に あっという間に千切られてまた冷たい風の中 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
四月は桜吹雪の中で
08-04-2024
四月は桜吹雪の中で
四月は桜吹雪の中で スニーカーで蹴りあげた身体を サドルがしっかり受け止めた 一周一・七五キロのアップダウン 砧公園のサイクリング・ロードは今や 散った桜が景色に流れ浮かぶ 魔法の国に変貌している ぐうっとペダルを踏み込む そこにいた空気が不意に 風だったと正体を明かす 一つ目のカーヴへ ためらわず預ける体重 待ちかねたように上がる速度 前方には積もった花びらが 漂泊の雲を真似て立ち込めている 迷わず突入 心が躍る 桃色が舞う 生きていることを歓迎されて 命が声をあげ喜んでいるみたいだ 四月は桜吹雪の中で 僕は勇気を取り戻す こんな夢みたいな出来事が この世界ではまだ起きるんだと うなずきながらペダルを漕いで 僕は勇気を取り戻す 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
72歳のスピードレーサー
25-03-2024
72歳のスピードレーサー
72歳のスピードレーサー 午前零時のスピードレーサーは ブロンズ像のように寡黙 海に突き出した断崖のカーヴを 華麗なハンドルさばきで制覇した あの自慢話も最近は影を潜めた 助手席で嬌声をあげていた女たちも もう孫のいる齢だ We were born to die 死ぬために生まれた 何も悲観的な話ではない 死ぬためには生きなければいけない なら〝どう生きるか〞と訳すべきだろう だがなぜあんなに急いだのか? スピード・レーサーは パイプの灰を落としながら自問する あの娘は言った コクトーの絵皿を使うホテルがあるのよ 小イワシのフリットが美味しいの マントンの小さな港で 深くブレーキを踏み込んでいたら 全く違う人生を見られたのかも知れない 午前二時にレーサーは眠る 昔は速さを競いあった〝時間〞も年老いて 今は柔らかな毛布のよう 心の形に寄り添って 寡黙な彼を包み込んでいる 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
S O K Oに居た
26-02-2024
S O K Oに居た
S O K Oに居た 俺は S O K Oに居た 1 9 9 0 年のイタリアに居た 異端者達の集うカフェで イタチゴッコを繰り返す警官とスリの間に居た 委託された若さを使い切れずにいた 痛みがコメカミを襲うたび 徒(いたずら) に白い粉を買いあさり 傷んだホテルの階段で売女(ばいた)を抱いた 俺は S O K Oに居た 蒸し暑い午後の伊丹空港に居た 板谷佐織という女が隣に居た 自分の身体には巫女(いたこ)の血が流れていると言っていた その夏はイタコロカイカイが大量発生した年で 踏みつけると黄色い体液が飛び散り 虎杖(いたどり)の様な花がスニーカーに咲いた 俺は S O K Oに居た いたたまれない恋に板谷が泣いた 最後のセックスの絶頂(いただき)で 俺は彼女のいたいけな睫毛をライターで焼いた 「痛ましい事件だ」と共同通信(ロイター)が書いた 壁から剥がれかけた日本地図の 自分が『居た』場所にピンを刺してみる 俺は S O K Oに居た…そう呟きながら 黄金色の『点』を増やしてゆく S O K Oに居たことだけが事実で どんなに愚かであっても無実で その戻らない時間こそが果実だったと思う まだソ連が存在する地球儀に マーカーで印を付けてみる 俺は S O K Oに居た…そう呟き続けると 『点』はやがてスペースを拡げ『面』になる 偶然に現れた『面』は顔のように見える 自分が何者かわからないまま生きてきたけれど きっとこれが俺の顔だ 曖昧な時間の中に出来事という『点』を打ってきた 俺の顔だ 俺は S O K Oに居た 居たリアに居た 居た丹空港に居た 居たん者の横に居た 居たチゴッコの間に居た 居たみの中にも居た 居た谷佐織の心に居た 居た女(こ)の血に浮かんで居た 居た杖(どり)が咲居た 居た頂(だき)の途中で未来を裂居た 居たたまれない居たいけな居たましい 居たずらをラ居ターで焼居た そして 居たいになった恋のそばに ずっと佇んで居た 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩森雪之丞スタッフX: https://twitter.com/yukinojo_news
二月の文学
12-02-2024
二月の文学
二月の文学 やがて雨が雪に変わると あなたは睫毛を街燈に向け微笑む またひとつ 世界の秘密を見つけたように そんなとき私は 空気として吸い込んでいた言葉が 感情の輪郭を現すのに気づく あわく いびつに ずっしりと それは二月の 文学 物語が舗道に降り積もる そうだったものをそうだと言い直したり 見えないものをあると言い切ったり 言葉にならなかったものを やはり言葉にできなかったり いつしか私は 二月の文学にとじこめられる 凍った唇への驚きと共に 千あるものを一文字で言いくるめたり 一つしかないものを千の比喩で言い落したり 言葉にならなかったものを もう一度言葉にしようとして 私はまだここにいるのだろう あなたと この世に この夜の隅に 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
例えば闇を太陽の形に切り取ること
29-01-2024
例えば闇を太陽の形に切り取ること
例えば闇を太陽の形に切り取ること 絵画館から続くこの舗道(みち) は いつ未来に繋がったんだろう 暗闇で触れた君の唇は 新しい生き物のように 七月の恋を呼吸していた 傘は捨てよう 湿った空気が雨を予感させるけれど 僕達の手は ぬくもりを囁きあうのに忙しい 立ち竦(すく)むほどの 夜の重さ 自分を責めるだけの夜の長さ 寂しさに溺れるための夜の深さ ひとりきりじゃ生きられないことをどうして君も知っているの? もう少し歩こう 寄り道が楽しいのは子供の頃と同じ 最後に帰る場所で 愛が僕達を待っているからだ 会話や微笑みやキス それが途切れた時の柔らかい沈黙 君が僕にくれるのは 例えば 明日を探すヒントや勇気みたいなモノ 僕が君にできるのは 指でハサミを作って 例えば 闇を太陽の形に切り取ること 夜がどんなに 重く長く深くても 闇の向こうには光が溢れていることを 僕なら君に伝えられると信じて 僕が君にできるのは 例えば闇を太陽の形に切り取ること 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
十月の透明な魚
14-01-2024
十月の透明な魚
十月の透明な魚 透明な魚達が跳ねて 刺繍のように波を海に縫い付けると 男は孤独でしかない 風はある時大切な言葉を話すがその時に限って人は耳をふさぎ 禍々しい世界に向けて 悲鳴をあげている その開けた口から太陽はなだれ込み形のない心にも影を作る 光が強いほど影は濃く不気味で こんな怪物のようなものを抱いて これからも生きていくのかと思うと 男はまたひどく憂鬱だ 幾億ものプランクトンの死骸が 哀しみを知らず西日にきらめく堤防 最後の煙草を挟んだ指にふうっと沖合の船が透けて見える ここにいることを報せておかないと 本当にこのまま消えてしまいそうで スマホで誰かの名を探すがそれが誰なのかは もう忘れている 透明な魚達が跳ねる十月の たぶんどこにもない海辺の村で 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩 森雪之丞スタッフX:⁠ https://twitter.com/yukinojo_news
腐らない果実
14-01-2024
腐らない果実
腐らない果実 安心していい おまえが飛び込んだ午後 12時38分のプールに 哀しみはひとかけらも紛れ込んではいない 粉々に割れた太陽が水飛沫に変わり 白いスイミングキャップが再び水面に現れた時 夏は見事に完成した パティオに繚乱と咲く原色の草花 パンの屑を啄(つい)ばみながら食卓(テーブル)を闊歩(かっぽ)する小鳥 銀の皿に盛られた果実の中から 奔放に熟れた桃をひとつ選び取り 出来る限り粗暴におまえはそれを齧る ローブを羽織ることさえもどかしく 濡れた身体が纏(まと)うのは音楽だけ こぼれる雫は足元で 永遠の在処(ありか)を告げる象形文字に変わり 解読しかけては太陽に盗まれる なぜ恋をしたのか訊ねあうことは なぜ生きているのか答えようとするくらい 無意味な行為だと学んできたから 二人はもう 滴り落ちるセツナサを隠そうとはしない 恋人よ ラベンダーに群がる蜜蜂が 不吉な和音で羽根を震わせても脅えることはない 恋はいつか終わる 甘く瑞々(みずみず)しい桃が 数日後地面で爛(ただ)れた姿を晒すそれとまったく同じ理由で 恋は朽ち果てる 互いの痛みを分かちあい 我儘を讃(たた)えあい 希望を失くさず犠牲を厭わず 神が妬むほど完璧な関係であればあるほど 溢れゆく月日の濁流は 二人がそこに留まることを許さず やがて恋はその形すら保てなくなる 恋人よ 恋はいつか終わる だがそれは悲しむことではない 幸せに満ちた夏の午後 別れた後の自分を空想し 必ず今日を思い返すことがあると想像できれば 降りそそぐこの陽射しが 絡めあうこの指先が 今生まれ今消えようとするこの 1秒が どんなにかけがえのないものなのか気づくはずだ 恋人よ 心配はいらない 齧りかけの桃に群がる蟻の一団が 嫉妬深い神の化身だとしても 脅えることはない 世界で唯一腐敗することのない 記憶という美しい果実を 二人は今 実らせたのだから 1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。 森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/ ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩森雪之丞スタッフX: https://twitter.com/yukinojo_news