六月は死者が囁く

森雪之丞 Poetry Readingの世界『感情の配線』

03-06-2024 • 1分

六月は死者が囁く

死者は生きる 生き残った者達の心の中で その者達が死者になるまで 瑞々(みずみず)しく

六月の雨の夜 あなたはここにいる 老いても美しかった あの少し傲慢な笑顔で 友は爪を噛む

風に煽(あお)られた雨粒が不意に窓を叩き この時を待っていたかのように 私は友に詫びる 疎遠になってしまった最後の数年を 逢いたいのに逢わなかった複雑な感情を 病室で別れも告げぬまま 天国に逝かせてしまった不甲斐なさを そして 私に激しく嫉妬させるほど あなたの生き様は素晴らしかったと そう言ってあげられなかった小さな自分を

私は死者に詫びる

けれど 赦(ゆる)しもせず 責めもせず 嘆くことも 諭(さと)すこともなく ただ死者は囁く 生きていることの尊さを 沈黙という言葉で


1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。

森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/

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