八月は幻

キミの斜め後ろにホコロビがある ほつれた紐や針金が数本 空気から食(は)み出している

ホコロビを避けながら愛しあった 崩壊の予鈴(よれい)を喘(あえ)ぎ声で殺しあった やがて 冷蔵庫の奥で発火したマッチのように 短く青白くキミは燃えた

八月は幻 そんなこと大人になれば誰でも知ってる 八月は幻 だからボクは詩人になりすませた 奔放なキミが 不意にそんな涙をこぼすまでは

ベッドのどこかにシコリがある さっき抱きあった時ごろごろと 脇腹の辺りで邪魔だった小さな塊

シーツに潜って どうやらキミは確かめている 幻と現実を繋いだ結び目が まだ解(ほど)けていないことを


1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。 メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。

森雪之丞 自選詩集『感情の配線』 2024年1月14日(日)発売 特設サイト:https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/

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