#2「グレンデルの母親は」

永瀬清子の世界

12-04-2024 • 4分

「グレンデルの母親は」は、1930年に出版された第一詩集「グレンデルの母親」に収録されています。
永瀬さんの随筆によれば、「グレンデル」とはイギリスの古い英雄物語詩「ベーオウルフ」に登場する怪物の名前です。永瀬さんは、「グレンデルの母親」の瞳を「古怪=古く怪しい」と書きますが、「不思議、風変り」だと表現しています。そして、そのこどもたちはやがて北方の「大怪(だいかい)=大きな怪物」になり、ひとりで「サブライム=尊く、神々しい」ほうへ歩んでいくというのです。
育児の困難さはときに周囲に理解されず、ともすれば母親は怪物のようにみられるのかもしれません。けれど、母親の愛情をうけとった子どもたちは、悪と憤怒の中にもとけることなく、ひとりでサブライムの方へ歩んでいく。
それが何より嬉しいことは、令和のいまも変わりません。
<文・小林章子>