#12「六月の夜」

永瀬清子の世界

17-06-2024 • 3分

この詩は、六月の夜、川沿いのポストに投函するときの様子を描いたものですが、永瀬さんは随筆「美しい夏至」の中にも、川沿いのポストへ投函にゆくときのことを書いています。「夕食後うす闇のころ、私の家の近くを流れ岡山市内を貫流する西川という用水の下手の橋の所まで手紙を入れにいった。家の近くの橋で川むこうにわたり、川沿いの道を下っていくと川幅はそのあたりで五、六メートルはあり、水無月(みなづき)の川はなみなみと水量がある。ふと気づくと道のまんなかに昼間の雨でできた浅い水たまりがあり、その中で何かひどくばたついている様子。夕あかりですかしてみると、水たまりにほとんどいっぱいになって四十センチ以上もある大きな魚がはねている。私はあまりめずらしいのですぐ近くの煙草屋さんへいき、ちょっと来てごらんなさい、と言うとすぐ三、四人の人が飛び出して来てすばやく用意のタモで押えた。それはひげのある正真正銘のナマズであった」「六月の夜」の出来事を表した詩と随筆から、永瀬さんの解放感と旺盛な好奇心が伝わってきます。<文・小林章子>