#16「私は地球」

永瀬清子の世界

15-07-2024 • 4分

永瀬さんの詩は、驚きや発見に満ちており、「私は地球」もそうした詩のひとつです。「私」と「地球」を等しく捉え、大きく広く、小さく狭く、視点を変えながら書かれています。たとえば、一人の愛は「ペンペン草のかげで雨やどりしているようなもの」と頼りなく弱いものです。ところが、その愛は「挫折の時に/ついに押しつつむ屍衣」、つまり、時としてどのようなことも受け入れて包み込む大きさ、強さとなるのです。「私」が秘めていた愛の力に驚かされます。詩人の井坂洋子さんは、「おどろく」「おどろく」と続いていることを、この詩の特徴の一つと指摘しています。「おどろく」は、リズミカルに、まるで「四十億年」という果てしない時間の中で受け継がれていく生命のように、この詩の中で繰り返されていきます。永瀬さんの詩に驚かされるのは、こうした視点と表現にもあるのではないでしょうか。<文・白根直子さん>