この詩の最後「こころのめくら」という表現は、不適切な表現ですが、1932年の作品発表時の時代的背景、また著者が故人であるという事情に鑑み、そのまま朗読しています。
「梢」は、1932年春に永瀬さんの従兄が亡くなり、やり場のない悲しみを書いた詩です。この従兄は、永瀬さんが詩人を志した時に、広く学ぶことが必要なのだと心理学や経済学など様々なジャンルの本を紹介して、応援してくれた人でした。永瀬さんは、「梢」という詩で、詩を樹木にたとえています。具体的には、宮沢賢治さんのように物事の本質を表現できる詩を「美しい樹木」や「幹」にたとえて賢治さんへの憧れを述べ、そのように書けない自分を折れやすい「梢」にたとえて、賢治さんのように書けない悲しみ、さらに従兄が亡くなった悲しみを織り込みながら表現しています。<文・白根直子>