先日行ったポッドキャスト合宿回の4本目です。対面の機会を活かして、解雇回避努力について詳しく議論しています。
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■話した内容
1. 片山組事件の影響
- 「片山組事件」は解雇回避努力の先例として扱われているが、本当に適用できるのか
- 整理解雇では、事業者の責めに期すべき理由による解雇なのだから、解雇回避のための最大限の努力を求められるが、私傷病の場合は事業者に落ち度がないため、同程度の努力が求められるかは議論の余地があるのではないか
2. 解雇権濫用法理
- 解雇は客観的合理的理由と社会通念上の相当性を必要とする
- 客観的合理的理由として、解雇事由があることと、解雇回避努力を尽くしたかが求められる。
- シャープNECディスプレイソリューションズ事件では、休職期間を満了したというだけではダメで、解雇回避努力を尽くしたかが指摘されている
- 個人的には、形骸化した休職期間を費やしただけでは解雇回避努力を尽くしたとは言えないので、休職期間中の関わりを充実させることが重要だと考えている
- 整理解雇はやや特殊な類型なので、個人における退職は、別に考える必要がある
3. 職務適正について
- 低位な職務もできないのに、高度なスキルができないという現実が、見逃されているように思える。検討はすべきだろうが。
- 休職期間の残がまだあるはずなのに、解雇回避努力としての配転の検討をしないといけないというのは、順序が間違っているのでは
- 医師が指示する配転は、本人の希望を反映している場合が多いのでは
- 採用時と復職時はやや異なるかもしれないが、継続的な契約関係を前提とした一時的な職務制限であればまだしも、現実的には未来永劫の制限(特別扱い)になっている
- 解雇回避努力バージョンの主治医意見書として、「通常勤務可能」「○ヶ月後には通常勤務ができる見込みがある」「見込みがない」の3択バージョンを作っても良いかもしれない
4. 契約解除と新契約の提案
- 平行線を辿った後の最終的な結論は、雇用契約終了後に新たな契約を提案することが合理的なのではないか
- 解雇回避努力の一環として、契約変更(新たな契約の締結)の提案をそもそもすべきなのだろうか
- 現実的には、新契約の待遇について、労働者の期待と実際の契約条件のギャップが問題となる
- 新契約提案時には慎重な対応が求められる。これを産業医に言わせようというのは、到底無理な話で、下手な期待をもたせかねず、紛糾しかねない
5. 復職支援としての高尾メソッド
- 世で言われている解雇回避努力を尽くした後の現実は、実はかなり悲惨
- それよりも、適切に復帰基準を定め、原職復帰を求め、それでは満了退職になってしまう場面で、これまでのような対応をする方が、一見本人の希望を尊重していないように見えて、誠実な対応なのでは
- 良い従業員には寄り添い型の対応をしたくなるが、復職後に職務遂行能力を発揮して欲しいと思うのであれば、良い従業員にこそ、メソッドに沿った対応をすべき
- 良い従業員は救い、悪い従業員はこの際にやめさせたい、というようなとんでもなくブラックな企業には、そもそもメソッドは使えない
- 医療職は人の命を扱うことを覚悟しているが、事務職はそのような覚悟はしていない
- 泣くほど苦労して、上司が部下のケアをしないといけない状況はおかしいのでは
- 感情的になったり、助けたいという思いを強く持ちすぎると、うまくいかない
- 苦手でできないことから逃げても良いというのは、甘やかし的な支援で、結果的に本人のためになっていない
- 厳しさは外部機関に求めるのが、結果的にうまくいかないのかもしれない