#47 みんまちトーク『風景とは自分の心のなかにあるもの〜元エルメス本社副社長 齋藤 峰明氏に聞く、日本と日本人への熱き思い(2)』

みんなのまちづくりトーク

07-04-2024 • 25分

この番組は「認定NPO法人日本都市計画家協会;通称⁠⁠⁠JSURP⁠⁠⁠(じぇいさーぷ)」がお届けするポッドキャスト『みんなのまちづくりトーク』です。毎回多彩なゲストと共に、いま話題のまちづくり事例、新しい制度、活動のhow-toなどを紹介していきます。

★☆★「この番組、いいね♪」とお感じになった方は是非、当協会(JSURP)へのご寄付を御願いします!あなたのご寄付がわたしたちNPO法人のエネルギー源になります!⁠⁠⁠⁠⁠⁠https://jsurp.jp/nyuukai/⁠⁠⁠⁠⁠

第47回は、前回に続き、当会Jsurp日本都市計画家協会の正会員;伴 宣久(ばん のぶひさ)さんと、伴さんの親しいご友人である齋藤 峰明(さいとう みねあき)さんをゲストスピーカーに迎え、地域ブランディングに関する齋藤さんの熱き思いをじっくりと伺うシリーズの第二回です。前回に続き齋藤さんの日本と日本人への熱き思いを、特に、シーナリーインターナショナル株式会社を立ち上げた背景にある、“風景とは自分の心のなかにあるもの”というお考えを伺います。どうぞゆっくりとお聴き下さい。

▼話していたことのリンク

フランスの最も美しい村協会

https://www.les-plus-beaux-villages-de-france.org/fr/

▼出演者

◆齋藤 峰明(さいとう みねあき):元エルメスパリ本社副社長。静岡県出身。1971年渡仏、パリ第⼀(ソルボンヌ)⼤学芸術学部卒。三越パリ駐在所⻑を経てエルメス本社に⼊社後、エルメスジャポンに赴任。1998年より代表取締役社⻑として⽇本でのエルメスの発展に貢献。2008年には外国⼈で初めてエルメスパリ本社の副社⻑及びライカカメラジャパン会⻑に就任。2015年にエルメスを退社後、シーナリーインターナショナルを設⽴。現在パリと東京をベースに、企業のブランド戦略のコンサルティングほか、伝統産業や地方再生の支援の活動を行う。フランス共和国国家功労勲章シュヴァリエ叙勲。エルメスでの仕事を語った本に「エスプリ思考〜エルメス本社副社長、齋藤峰明が語る」(川島蓉子著)ほか、虎屋黒川社長との共著「老舗の流儀」がある。

◆伴 宜久(伴 のぶひさ): (一財)日本建築設備・昇降機センター定期報告部長。東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒業。東京都立大学(旧首都大学東京)都市環境科学研究科博士課程後期修了、博士(工学)。民間から東京都特別区(台東区)管理職を経て、現職。行政で、営繕課長では、台東区立病院建設、上野中央通り地下駐車場建設等、公共施設の建設、営繕を担当。まちづくり推進課長として、浅草通りシンボルロード整備地元調整担当、浅草六区地区計画策定、御徒町地区計画変更、両地区計画区域内の事業調整、台東区景観計画を策定。近著に「〔実践〕自治体まちづくり学」(公人の友社 (2024/2/5);共著)がある。

□パーソナリティ:原 拓也(Jsurp理事・副会長)

◇フリーBGM・音楽素材MusMus https://musmus.main.jp

▼キーワード

渡仏後、(留学した人はみなそうだと思うが)自分のアイデンティティに向き合うことに/渡仏で目的達成してしまったところがあった/フランスで生活するなかで自分が誰なのか分からなくなった/自由を謳歌はしていたが自分がいなくても社会は変わらないとの思いと悩み/毎日フランス語を話すなか、自分の思考を把握出来なくなった時期/自分を取り戻さなくてならないとの思い/自由でいること自体が問題と(19歳の当時)考えた/そのために「社会との繋がり」が大切と/自分が何ができるのか/人は社会的な動物/一人では生きられない/当時は実は大学に行くつもりは無かったが大学進学を決めた/(渡仏後にあらためて勉強して)ソルボンヌ大学に入学/一方、生活するためのアルバイトとして三越(三越トラベル)に入った/自分が何かの役に立っているという気持ちになってきた/ヨーロッパの良いモノを取り入れて社会を豊かにしていく課程の当時の日本に対して/自分の存在感がうまく折り合いが付いた/最初の10年間はそんな毎日/興味があったのは「自分のアイデンティティ」/自分という人間はどうやって出来てきたのか/自分が日本人であるというがどういうことなのか/自分の生い立ちも振りかえることに/小学校2年生の頃の静岡の里山の風景/お祭り/それが確かな原風景/それが自分の支えだった/それが(田舎の原風景が)無いひとはどうなってしまうのだろうと/1992年にエルメスに入社して日本に赴任/大宮の店を見に行くことがあった/小学校の頃に行ったことがあったがその頃は田園風景の記憶/当時は繋がっていなかった感覚/ところが92年当時電車から見る風景はずっと続く市街地/大宮の駅前にあったのはマクドナルドやケンタッキーや不二家などのチェーン店/電車に乗っている子供は任天堂のゲーム機に興じていた/その子供のアイデンティティを、その親のアイデンティティを、人生を考えた/その親は大宮出身ではなくたまたま居住地として大宮を選んだのかもしれない/そしてその子供はマクドナルドやケンタッキーの記憶しかないかもしれない/あるいはコンピューターゲームで遊んでいる/衝撃的な感覚/フランスで長い間住んでいると風景が違う/日本に帰ってきて驚いたのは/新幹線から見る風景は様々な色の屋根/日本の屋根(瓦)は黒では無いのかという思い/飛行機からみる日本の夜景は蛍光灯やネオンの色/豊かになっているはずなのにとの思い/日本は谷崎潤一郎の世界観があるはず/光には極めて敏感の筈/それなのに自分が記憶していた風景と異なっている/フランスでは田舎の風景を非常に大切にしている/パリに住んでいるのはみな田舎の人たちなので、パリに住みながら田舎にも住宅を買って大切にしている/もちろん大宮にもお寺などがあると思うが/果たしてそのようなものが無くなっていくとしたら、自分自身が無くなると言うことでは無いか/どうしてフランスは守っているのかというと制度がきちんと出来ている/日本も京都など点で見れば美しいものが残っているしお店に行けば美しいものがあるが/普通の家はそうでもない/そこに一生住むのかという思い/フランスでは古い家ほど価値がある/もっと家に凝っても良いのでは無いかと思う/恐らく戦後の貧しい時代に「暗さ」が貧しさの象徴だったのだろう/それに対して蛍光灯が普及した/蛇口をひねって水が出るように/しかし従来日本には光に対する日本人の生活があった筈/(そのような思いから)設立したのが「シーナリーインターナショナル株式会社」/シーナリー(風景)というのは一般的には「綺麗な景色」/綺麗な景色は「ソト」にあると思われているが・・/自然の風景は美しいに決まっている/生活空間は人がつくったもの/畑を耕し田んぼをつくり、夏が暑ければ並木をつくり/人の営みがそこにある/人間が自然に働きかけて/自分たちの生活の場/心象風景というように「自分の心の中にある」のが風景だと思う/なぜ里山が美しいかと言うと自分の考えは「代々祖先がつくってきた景色」だから/自分が美しいと思うのは祖先が居たから/人間が生きてきたから/生き様が景色をつくっている/人間が生きるための、自分の子ども達を食べさせるためにつくってきた景色だから/そういう景色を、今生きている時代の僕らは、次の世代に残していかないといけない/東京と大阪に集中してしまい田舎が過疎化している/自分が見えるものを自分の対比で自分の内面性との関わりでつくりたい/フランスにはみんなが知っている制度として「フランスで最も美しい村」という制度がある/海辺の景色を保護する法令を早いうちにつくった/海辺の景観が守られている/高層のリゾートホテルは無い/スペインには高層マンションが建っているが/一方ノルマンディーなどに行くと別荘があるが/公有地として海辺に至る道をつくることになっている/景色は昔から同じでは無い/重なっている/そういう歴史を残していくと/「フランスで最も美しい村」には厳密な条件がある/ひとつには文化財が最低二つある/瓦の色/窓枠の色や素材/アプローチの何百メートル以内には工場があっては駄目/いまは日本の「最も美しい村連合」のブランディングアドバイザーに着任(次回へ続く)