Q:店長です。人材不足に対応するため、少し前からスタッフによる紹介制度を導入することになりました。紹介した人が採用された場合は一定の報奨金を支払うことにしたのですが、採用した人がすぐに辞めてしまい報奨金が損になってしまいました。法的部分の注意事項も含め、有意義な紹介制度運用のアドバイスを頂けないでしょうか。
A:損や返金トラブルにならないよう、紹介採用後一定期間経過後に報奨金を支払うような仕組みを入れて導入する、紹介した側だけでなく、紹介された側への配慮も必要でしょう。
こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/
MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762
<解説>
人不足に悩む店舗も多い中、一つの解決策になりうる「スタッフ紹介制度」。現在店舗で働いているスタッフに知人・友人を紹介してもらうことで質の良い人員を確保できるチャンスが高まり、求人にかかる費用負担を軽減できるというメリットもあります。
スタッフの紹介によって採用が決まった時には、紹介したスタッフ、あるいは採用されたスタッフにも報奨金を出す仕組みにしているところもあります。スタッフにとっても取り組みに熱が入るところですが、紹介によって入社したスタッフが必ずしも定着するわけではありません。もし、店舗として採用時に報奨金を出す仕組みにしていると、定着せずすぐに辞めてしまった場合に、得るものはなし、お金だけが出て行くということになり、店舗としては損です。さらに、そこで「定着しなかったから報奨金を返せ」などとスタッフに言ってしまうと、トラブルになるのは必至です。
そこで今回は、トラブルにならないスタッフ紹介制度運用のポイントを見ていきます。
まず、法的な解釈としてこの制度が問題なく運用できるのか、ということについてお話ししますと、職業安定法という法律で「労働者の募集を行う者に対して報酬を与えること」は原則禁止されています。これは、労働基準法上の中間搾取に当たるからです。しかし例外として、自社のスタッフが募集を行い、そのスタッフに対して賃金という形で紹介報酬を支払うことは認められています。要は、会社などの「業」として紹介事業を行う場合は許可を受けない限り法律違反となりますが、そうでなければ常識的な範囲である限り問題はない、ということになります。なお、労働局としてはこの募集活動も従業員職があっての活動なので、報奨金は労働の対価として支払う「給与所得」としてほしいという指摘があります。手数料の支払いでも法律には触れませんが「雑所得」扱いとなること、年間で20万円を超える場合は確定申告が必要となることから、給与の位置づけとしたほうが良いとされているようです。
【紹介制度運用の3つのポイント】
①日頃から声をかけておく
まず、「身の回りで仕事を探している人がいたら紹介してください」という言葉は、制度として本格的に行う場合でなくても常日頃からスタッフに声をかけておくと良いでしょう。スタッフの知人は、例えば同じ学校や地域に住んでいる人であることも多く、スタッフも自分の知っている人が仲間として加わることで安心感が生まれることもあります。もちろん、紹介してもらった場合でも、面接などの場でしっかりと店舗のコンセプトに合うかどうかの確認は必要です。しかし、労力や時間をかけて探し、紹介してくれたことは間違いないので、感謝の気持ちはしっかり伝えましょう。
②制度をしっかりと構築しよう
そして、もし報奨金を支払うなどの制度として導入を考える場合は、その仕組みをしっかりと構築すること、決まった仕組みは明文化し、スタッフ全員と共有することが大切です。なお、支払い方は現金でも商品券でも給与所得として扱うことになりますが、必ず就業規則への記載を行い届け出ること、さらにスタッフ向けの「紹介制度導入の流れや手引き」、氏名や経験などを簡単に書ける「紹介用シート」、あとは店舗側で管理できる「紹介された方のリスト」を用意しておきます。
紹介制度導入の手引きについては、制度開始時期、使うツール類、採用までのプロセスや採用可否の判断までおおよそかかる日数、報奨金の有無や支給の要件・タイミング、どういう人と一緒に働きたいかの条件などがあり、その他必要に応じて注意事項などを書いておきます。
③報奨金の支払いタイミング
報奨金ですが、スタッフからの紹介を受けて、無事に採用!となったタイミングで支給するところもありますが、その後定着せず、1ヶ月もたたずに退職…ということにもなりかねません。そのため、例えば採用後1ヶ月以上勤務をしていると判断できた際に支給する、というルールにしておくと良いでしょう。この期間は必ずしも1ヶ月でなくても構いませんが、定着するまでには少なくとも給与の一支払い期間をベースに考えておきましょう。
以上、スタッフ紹介制度について見てきました。もちろん、通常の採用活動も大切ですので、並行して行っていくと良いでしょう。