Q:店長です。スタッフに本部主催の育成研修に行ってもらいました。店舗での勤務はしていないので給料を支払わなかったのですが、スタッフから「研修のときの給料が入っていないのでは」と言われました。給料は払わないといけないのでしょうか?
A: 仕事に関する外部研修の場合で、スタッフが自主的に受けているものでない限り、店舗内での勤務でなくても給料は発生します。
こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/
MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762
<解説>
コンビニエンスストアで勤務する店長やスタッフが研修を受ける場合、というと、その多くは本部主催のものが中心になるでしょうか。例えば、本部がスタッフ育成の一環として店舗に提供している店内資格の取得を目的とした研修(店長研修やスタッフの資格など)を用意しているチェーンもありますし、最近では、接客力向上研修や管理者を対象とした労務管理のセミナーも増えてきています。その他、国家資格や民間資格取得のための講座、スキルアップのために外部機関の行う研修やセミナーの受講を推奨しているところもあるでしょう。さらには社内研修も行っている店舗(会社)もあるかと思いますが、こうした研修受講が給料支給の対象になるのかどうか、というのが今回のテーマです。
そもそも、給料が発生する条件は、使用者(店舗の責任者)の指揮命令下を受けて、労働者(スタッフ)が労働を提供すること。これは、店舗での勤務はもちろん、店舗外においても同じです。店舗の外で受ける研修が「労働」にあたるかどうかが、判断材料となります。いくつかの事例をもとに確認してみましょう。
【研修の事例と労働時間の関係】
①参加の義務が特にない、店舗側でも強制ではない本部研修
スタッフ側から「自分の勉強のために行きたい」と自主的に申告があり参加する場合は、すぐに労働時間(給与の支給対象)とはならず、各店舗の判断に委ねられます。もちろん、労働時間として給与を出しても構いません。
本部研修に限らず、その他の外部機関での研修、セミナーなども同様です。
②店内資格を取得するために受けに行く本部主催の研修
これは、「店内資格取得」そのものが仕事(役割や業務内容、あるいは給与)に直結する研修であり、店長やオーナーから「受けてきてね」などの明確な指示で受ける場合は、確実に労働時間となります。ただ、強制力は一見なくても、その資格を取らないとスタッフが店舗で不利益を被る(減給の対象となる、昇給しない、受けないことを理由に極度に業務内容を制限される、など)ような場合は、強制力が働いているのと同じです。この場合は、同じように労働時間となり、給与支払いの対象となります。(場合によっては、こうした「見えない強制」がトラブルのもとになりますので、対応も注意が必要です。)
逆に、その店内資格の取得がスタッフや店舗にとってある程度自由度の高いものであり、「この資格を取っておくと有利に働くな」という理由で受講をする場合は、すぐに労働時間とはなりません。
③所属企業内で行われる研修
店舗外で行われる自社主催のイベントや研修などがこのケースにあたります。複数店舗経営の企業では「店長会議」などの名称で、取り組み報告と勉強会を兼ねることもあるようです。この場合も、強制的に参加となる場合は、給与が発生します。例えば「店長は強制参加、その他スタッフも自由に参加OK」となっていて、スタッフが自分の意思で参加をする場合は、その部分に限りただちに労働時間とは判断されません。
まとめますと、その研修が「自由参加になっている」ということ、また、「受けないことによって対象者が不利にならない」の二つの要件を満たしている場合には、給与支給の対象とはなりませんが、それ以外の場合は労働時間となり、給与支給の対象となります。
【給与支給のポイント】
もし、その研修が労働時間となり給与の支払いをする対象となる場合、どのように計算すればいいのでしょうか。時給者の場合は、その日に受けた研修時間を申告してもらい、時給×研修時間(休憩時間は除く)として計算するのが自然でしょう。また、この場合は忘れずに勤怠登録もしておきましょう。月給者の場合は、基本的に固定給であるため、研修時間が通常の勤務時間を超えない限りは変動がありませんが、例えばその研修が休日に行われる場合は、割増賃金が発生しますので、忘れないように計算しましょう。
また、移動時間については、通常の店舗への出勤と同様、労働時間とは判断されません。理由は、その移動時間に仕事をしているわけではない(原則何をしていてもいい自由時間である)ことによります。
【研修受講もモチベーションアップに】
例えば、月に一つだけ仕事に関連する研修や講座を受講すると、その受講費用の一部を店舗側が負担するような制度を導入することで、スタッフが自ら成長する機会の提供にもつながるかもしれません。研修はうまく活用すると、スタッフのスキルアップはもちろん、やる気の維持・向上にもつながります。