Q:店長です。新しいスタッフの採用も決まり、雇用管理の重要性をより感じています。しかし、具体的にどういうところから取り組んでいけば良いのか、途方にくれています。まず、行っておいた方が良いことは何でしょうか…。
A:スタッフの雇用契約書の作成と締結、36協定の届出、就業規則の作成と届出は完了していますか?法律を単に難しいと敬遠せず、基本的なルールは押さえておきましょう。地道な対応が、トラブル防止につながります。
こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/
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<解説>
コンビニエンスストアの経営や運営において、労務管理はとても大切なもの…という言葉、皆さまは何度も聞かれていることと思います。しかし、国のルールである法律が絡む話も多いため、売上を上げるための接客や発注、清掃など店舗オペレーションの改善などに比べて、抵抗を感じる方が多いのも事実です。特に、人の部分で言えば、スタッフの育成、あるいはシフトをどう埋めるかに苦心されながら、労務管理を行うことに二の足を踏んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私も店舗勤務時代には、まさに人繰りに追われていました。ひたすら1週間のシフトをどう埋めて、日々の店舗運営をどうこなしていくかで精一杯。朝8時に出勤して、レジ精算から発注、接客、納品作業を繰り返して気が付けば22時になり、さあいよいよ夜勤スタッフに交代だ!と思ったら、そのスタッフが来ない…ということもありました。
新たなスタッフの採用については、求人広告を見て来る応募者に対して、面接で何を質問すればいいかをそれまでの経験をもとに自分で考えることは出来ました。そこで出来る限り、志望理由で「接客が好きだ」と言った人を採用しようと思い、そうした人を集めていったら、明るい職場にはなったけれども、いわゆる「バックレ」に遭い、信じていたスタッフに裏切られることの辛さを経験しました。極め付けは精算の際、ほとんど使わないレジのお金がキレイに300円合わないな…と思い、確認のために防犯カメラを確認したらスタッフの横領行為を目撃。モニタ画面越しに行われる犯罪行為にショックを受けたこともあります。しかし、そのとき私には何の知識もありませんでしたから、そうした行為をしたスタッフへの対処がわからず、ただ呆然とするばかりでした。
その一方で、一所懸命働いてくれるスタッフも多かったのですが、その中で「休憩を分けて取ってもいいですか?」という質問や、年末近くになって「ダンナの扶養から抜けたくないから、勤務時間を調整させてほしい」という相談があったり、学生スタッフが22時を超えて働くことがなぜダメなのか、ということを知る機会に恵まれたりして、大切なことはすべて実務という形でスタッフから教わることになりました。同時に、自分自身も一従業員として、さまざまな決まりで守られているんだな、ということを実感したものです。
さて、話を元に戻しますと、法律と聞いただけで拒否反応を示す人も多いですが、労働に関する法律は、「労働基準法」をベースに、何十もの数あります。これらを一つ一つ見て、理解し、一気に守っていくことは、正直申し上げて至難の技です。そうなると、まず何から優先的に知り、実践していけば良いか、ということになりますが、私は直接的にスタッフの雇用や勤務に関わる部分から確認し実施、あるいは見直しをしていくことをご提案しています。例えば、「雇用契約は書面で交わす」、「1日8時間、週40時間までが法律で認められている勤務時間で、それ以降に働くと残業扱いになる」とか「残業を行う場合には36協定を事前に出す」、「10人以上のスタッフがいる場合は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る」こと、「労災保険は一人でもスタッフがいれば加入する必要がある」ことなどです。
もちろん、知っているよ!という内容もたくさんあるとは思いますが、経営者や店長自身が知っていれば良いのではなく、スタッフも知っている必要があるということ、また、知ってはいるけど実施はしていない、は法律違反の観点から最も良くなく、かつリスクが大きいということもお伝えしなければなりません。特に近年はスタッフ自身の生活に関わる部分となると、スタッフも必死で自分の身を守ろうと、本やインターネットで調べて主張してきます。そうした時に、知らない、あるいは出来ていないからといって感情論で応戦してしまっては意味がありません。スタッフは店舗運営上、不可欠な存在であり、スタッフも店舗がないと働けません。彼らの主張にはしっかりと向き合う必要があります。また、彼らの知識も正しい認識とは限りませんから、正しい認識を持って対応しなければ、店舗側が振り回されます。まずは、コンビニエンスストアの店舗経営を行う以上、法律の実務的な部分を捉えて行動に移しましょう。こうした決まりは、自身の店舗を守りスタッフが働きやすい環境を作るためにあるのですから。